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八幡は先に真菜加を部屋に連れていき、みんなには嘘をついて戻った、ということも充分あり得る
というかそれが一番自然なように思う
李にお礼を言って部屋を出ようとした時、開発部の部長に呼び止められ、経営企画部の上司にシステム開発案を渡してくれと頼まれた
仕方なく部署に帰ると、自分のデスクに仕事が置かれていて、結局その日は八幡のところには行けなかった
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早々に保険証を返しにいかなければならない
月初に周期が終わったと言っていたから、今月は保険証を使う頻度は少ないだろう
そのためには1日有給を使って休まなければならない
一度受診すれば、今月いっぱいは保険証を見せなくて済む
その間に母子手帳をもらい、美央に打ち明ける
ギリギリかもしれない
しかし、もう一度保険証を盗むリスクは避けたい
午前中、真菜加は美央の最寄り駅近くの産婦人科を訪れた
ネットで評判の、そこそこ患者数がいるような、中規模の産婦人科だ
朝一で訪れたが、一時間近く待ってやっと呼ばれた
事前に尿を提出していたため、結果はすぐに告げられた
「陽性反応出ましたので、エコーで診てみましょうね」
カーテンが引かれた内診室に通され、下着を脱いで椅子に座るように指示された
言われた通りにすると、看護師が下半身にブランケットをかけて椅子を回転させた
カーテンの向こうに下半身だけが出る構造だ
カーテンの向こうで金属音がした
医師が「それでは診てみますね~力抜いてください。冷たいですよ~」と声をかけた
膣の中に、エコーが入っていくのがわかった
すると椅子に取り付けらたモニターに砂嵐のような映像が映し出され、その真ん中にぽっかりと黒い丸が見えてきた
さらにその中に、グレーの空豆のようなものがあった
「胎芽確認できましたね。7週だと思います。来週には心音が確認できると思うのでまたいらしてください」
真菜加はプリントアウトしてもらった胎児の写真を受け取った
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