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この写真だけでも説得の材料にはなるが、できれば母子手帳がほしい 交付には身分証明書などは必要だろうか 自治体のホームページを確認するが、身分証の提示の記載はどこにもない それなら好都合だ 真菜加は早速美央にラインを入れた 翌日、会社帰りに美央の家に寄り、夕御飯をご馳走してもらうことになった 美央がキッチンで夕飯の支度をしてる間にバッグに保険証を戻す この日の目的は果たした だが、少しでも美央と一緒にいたい 「最近よく連絡くれるね」 「ごめん。大丈夫だった?」 「私は大歓迎たよ。仕事減らしたし」 美央は2年くらい前から、治療に専念するために仕事をパートに変えていた 「グラタンと蒸し鶏のサラダだよ。デザートはパウンドケーキ」 「楽しみ」 最近、ご飯の炊ける匂いが鼻につくようになっていたが、グラタンなら食べられそうだ テーブルの上に春野菜がたくさんのったグラタンと、大盛りのサラダが運ばれてきた。ミネストローネもついている 「うん、おいしい!」 「そう?」 美央は嬉しそうに笑った 「やっぱりひとが作ったご飯はおいしいな」 「真菜加はちゃんと自炊してる?」 「それなりにはしてるよ。主につまみだけど」 それも最近はしていない お酒を飲まなくなったし、とにかくだるいので、コンビニでサラダスティックを買って夕飯に食べる日々が続いていた 調子がよいときは食欲もある こういうつわりのタイプもあるのかと、実際に妊娠して初めて知った 「こないだのケーキバイキングのあと、体重計にのったら2キロも増えてて、食事を切り替えたのよ」 「グラタンって太るんじゃない?」 「そこは考えてあるから」 グラタンを探っていくと、中に入っていたのは豆腐だった 「豆腐グラタン」 「ヘルシーでいいでしょ」 「昌孝さんは物足りないって言わない?」 「言わない。むしろヘルシー料理のが好きみたいなんだよね」 「相変わらず女子っぽいところあるよね」 アウトドアが好きな美央の夫の昌孝は、流行りものが好きで、話題のスイーツやカフェにも目がない 「こないだのバイキングも行きたいって言ってて、今度また行くことになった」 金遣いは荒いが、稼ぐ方も稼ぐ 端から見れば美央は、夫婦で悠々自適なDINKS生活を営んでることになる 「いましか行けないもんね」 真菜加が言うと、美央は悲しそうな表情を浮かべて 「本当にそうならいいんだけどね」 と言った
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