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 レバノンを含む中東には、メイド限定の特殊な雇用制度がある。  それは外国人メイドにのみ適用されるもので、カファラ制度と呼ばれている。  カファラ制度で雇用契約を交わした外国人メイドは、雇い主に保証人となってもらう代わりにパスポートは没収され、家族との連絡手段も絶たれることになる。  カファラは人権そのものを没収されるような契約制度なので、メイドが雇い主から性的虐待を受けたり、監禁されたりする悲劇が一定の割合で起きることになる。  ラシード・スファルが恋をした相手というのは、まさにそのような悲劇的な状況に置かれてしまっている少女だった。
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