ダウンジング

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 父が死に、そして母が死んだ。しかし涙は出なかった。それは仕方がない。  私が物心付いた頃からお酒に溺れ働かなかった父、そんな父に三行半(みくだりはん)も突き付けられず哀れにも働き続けた母。  私からすればどっちもどっち。2人とも依存し合っていたようにしか見えない。  暗くすさんだ家の空気の入れ替えがやっと出来る、そんな感じだった。 「真澄(ますみ)……、何て言っていいか……。大変だったね」  小中一緒で今でも仲良くしている早苗(さなえ)が困ったようにねぎらいの言葉をくれた。それはそうだろう。私たちはまだ親を亡くす年ではない。早苗はもう結婚して保育園に通う子どもがいるが、私は結婚さえしていない。それどころか彼氏もいない。  早苗の両親も舅姑(しゅうとしゅうとめ)もまだまだ元気だ。孫におもちゃや服を買うんだと張り切って働いているそうだ。  うちの両親は疲れ果てていた。本当の年よりもずっと老けて見えていた。そんな暗い家だったので友人も呼んだ事がなかった。でもこれからは呼べる。何なら彼氏を作って泊まっていってもらう事だって出来る。
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