泣くもんか

2/2
前へ
/2ページ
次へ
 出会ってから、ずっと一緒だった。同じ病室で、同じ苦しみを抱えてきた。  どうしようもない泣き虫だけど、こいつだけが、私の気持ちを本当に理解してくれた。 「ごめんね……あやちゃん……ごめんね」 「……バッカじゃないの。そんなの、あんたが謝ることじゃないじゃん」 「え?」 「私が、そうしてほしかっただけ。私が死んだ後も、あんたにはたくさん生きて、楽しいこと、いっぱいしてほしかったんだよ。あんた、私がいないと、いつも一人だったから」 「……ぼく、友達できたよ」 「え……?」 「あやちゃんのおかげで、ぼく、強くなれたんだ。人に、話しかけられるようになったんだ」 (……別に、私のおかげじゃないし) 「でも……さみしかったよ」 「え……?」 「やっぱり、ぼくの一番の友達は、あやちゃんだから」 「――――っ!!」 「ずっと……会いたかったよ……」 (あぁもう! 泣き止んだと思ったらまたすぐ……に……)  目の前が、滲んでいく。こいつの顔の輪郭まで歪んで……。 (あぁ、最悪……)  こいつは、体も心も、私なんかよりずっと重くて、苦しんでいた。  だから、こいつの前でだけは絶対に泣かない。そう、決めてたのに。 「……あや、ちゃん?」 「私だって!!」  最後の最後で、何でこうなるかな。 「私だって……寂しかった……ずっと一緒に、生きたかったよ!」 「……う……ひぐ……」  私の泣き顔なんか見たら、こいつ、絶対泣き止まなくなるのに。  どうしようもなくお人好しで、優しい奴だから。 「わああああああん!! あやちゃああああん!!」  案の定、こいつは鼻水垂らして駆け寄ってきた。 (ほらやっぱり!)  最悪だ。こんなの最悪の展開のはずなのに……何でなの。 「うわああああああん!!」  私も、こいつと同じように泣きじゃくった。馬鹿みたいに喚いて、みっともなく涙と鼻水を垂らして。  もう体なんてないはずなのに、抱きしめたこいつは、涙が溢れるくらい温かかった。
/2ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加