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俺は…幼い頃に両親を交通事故で亡くし、さりとて引き取ってくれる親類縁者も無く、幼少期から高校卒業までを養護施設で過ごした。
そして、俺は施設でも学校でも激しいイジメや虐待を受け続けた。
今、思うと…
そんな俺に味方をしてくれる人間は結局、周りには一人もいなかった…。
俺は、不幸続きの自分の人生に思いを馳せては、よく一人で泣きじゃくったものだ。
しかし…である。
徐々に徐々に…
自分の目から溢れ出る涙の理由が…
決して悔しくて泣いている訳でもなければ、悲しくて泣いている訳でもない…ましてや、自分の不幸な人生を恨んで泣いている訳でもない…と、何となくではあるが、そう感じ始める様になったのである。
そして、ある日…
あれは確か、俺が高校生の頃だったと思う。
突然、頭の中に
『ある確信めいた考え』がヒラメいた!
「そうか!
俺は、自分のこの不幸続きの人生に…感動の念を抱いているんだ!」
それは、あたかも別の第三者が…小説か映画の主人公の人生に共感や同情をして、思わず涙しているかの様に…。
それから…いつしか俺は、自分の『不幸続きの人生』を『ドラマチックな展開の人生』と、心の中で言葉を変換する様になっていた。
今になって、改めて思い返してみると…
いつから、こんな変わった感覚を持つ様になったのか…自分でも、ハッキリと正確には分からなくなっている。
もしかしたら…
この変わった感覚は、自分の不幸続きの人生に心が折れない様にする為の…無意識に働いた『自己防衛本能』なのかもしれないし、はたまた単なる現実逃避の為の都合の良い『自己暗示』なのかもしれない…。
まあ…俺にとっては、そんな事はどちらでも構わない。
ただ、はっきりと言えるのは…この込み上げて来る感情は決して悔しさや悲しみや恨みではなく…
間違いなく感動の念なのだ!
その反面…
実は、俺は今まで何か良い事が有った時、『あまりの嬉しさに泣いた』…『嬉し涙を流した』という経験が、一度も無かった…。
そんな時は、不思議と涙が一滴も流れて来ないのである。
俺が感動して涙を流すのは…
決まって自分の人生で何か不幸な事が有った時だけなのである…。
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