【1・男】

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「ウゥ…」 と、俺は夜の浜辺で妖艶な満月を眺めながら…更に、これまでの不幸続きの人生を振り返って感動の涙を流し続けた。 高校卒業と同時に施設を出て社会人となった俺は、就職先の商社で額に汗してがむしゃらに働いた。 そんな日々を送っているうち… あれは、つい今から三ヶ月ほど前の事だ。 何と!俺は普段の頑張りを会社に認められて、ある新企画の推進役として重要なポストを任されたのである! そして、その上! こんな俺にも恋人ができたのだ! 「よし! 不幸続きのこの俺にも人生の道が開けて来た!」 俺は俄然、張り切った! しかし… と、言うか… やっぱり…と、言うか… それでも、俺の目から… 『嬉し涙』が流れ出る事は、無かった。 しかし… そんな時である。 今度は、つい先月の事なのだが… 俺は、仕事でうっかり重大なミスを犯してしまい… その結果、会社から与えられたポストを剥奪されてしまった。 俺は、会社での居場所を失い… 先週、自ら辞表を提出したのであった。 更には、つい昨日の事…俺は交際を始めて間も無い恋人の真輝子から… 「私、出世コースから外れた男には、興味が無いの」と、別れ話をも切り出されてしまった…。 そう。 つまり現在、俺は仕事も無ければ…恋人もいない。 そして元々、家族もいない。 天涯孤独の身だ。 更に付け加えるなら、不幸のどん底だ。 「ああ…やっぱり、俺の人生は不幸の連続…ドラマチックな展開の連続だなぁ…」
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