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【2・女】
「わぁ…。
今夜の月は、何て綺麗なのかしら…」
私は…目の前に浮かぶ満月に思わず感嘆の溜息をついてしまった。
秋の夜の浜辺…。
こうして、波打ち際で夜空を見上げている私以外に辺りに人影は無い。
聞こえて来るのは、ただ波の音だけ…。
目の前をすうっと流れ星が横切って行く…。
と、
不意に…
「ああ…」
私の両目から、涙が溢れて来る。
私は、昔から涙腺が弱い。
何か有ると、すぐに感極まって涙を流してしまうのだ。
だから、周りの人達から『感動屋さん』なんて呼ばれたりしている。
しかし、実は…
私が今、涙を流している理由は…
別に目の前の綺麗な満月に感動して…という訳ではない。
私は…自分自身の『不甲斐なさ』『情けなさ』に落胆し、絶望して涙を流しているのだ。
現在の私の働き先は、典型的な『男中心』の職場である。
何人かいる同僚の女の子達は皆、もっぱらお茶汲みや雑用ばかりをやらされている。
しかし…それが私には、納得できなかった!
「女性だって、頑張れば男性と同じくらい大事な仕事を任されて良いはずよ!」
私は、そんな思いからこれまで一心不乱に仕事に打ち込んで来た!
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