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すると…
「そうだったのですか…。見ず知らずの私に優しいお声をかけて下さるなんて…ありがとうございます」
と、女が涙を拭いながらニッコリ微笑んで頭を下げて来たではないか!
「い、いえ!そんな!」
俺は、物凄く照れながら頭をかいた!
こ、この女性…本当に美しい!
つい昨日、別れた元恋人の真輝子と比べても、ケタ違いの美しさだ!
そう言えば、真輝子のヤツ…
「私、出世コースから外れた男には、興味が無いの」だなんて…俺に向かって堂々と酷い別れの文句を吐き出しやがってからに!
俺は…更に、目の前のその美しい女性に話しかけてみた。
「ところで大変、不シツケですが…何かお困り事ですか?今、貴女…ここで泣いていましたよね?
もし良かったら、そのワケを俺に打ち明けてみませんか?初対面の俺にだからこそ、逆に遠慮無く話してスッキリする事だって有るかもしれませんよ」
俺は…
『よくもまあ、こんなキザな台詞がペラペラと口から飛び出して来るものだな…』
と、自分自身でも内心、呆れながら喋り続けた。
すると…
彼女は、クスリと笑うと…
「重ね重ね、お気遣いありがとうございます」
再び、頭を下げて来たではないか!
「あ!そ、そうだ!
ちょっと、ここで待ってて下さいね!」
俺は、全速力で浜辺に有る休業中の海の家横の自販機まで走ると、缶コーヒーを二本買い、これまた全速力で彼女の前まで戻った。
「はい、どうぞ!お口に合えば良いのですが」
俺はそう言うと、彼女に缶コーヒーを一本、差し出した。
彼女はそれを受け取り、またもや「ありがとうございます」と、お礼を言うと…
「それじゃあ…そこまで仰って頂けるのでしたら、お言葉に甘えて私の愚痴なんかを聞いて頂いてもよろしいでしょうか…。実は、私も誰かに聞いて欲しかったんです」
と、自分の身の上を話し始めたのだった。
彼女の話によると…
何でも、彼女は男優位の職場で頑張って仕事で頭角を現し…
その結果、遂に大事な業務を担当してこの街へ出張で、やって来たらしい。
しかし…いざ、仕事で結果を出そうと頑張ってみても…
空振り空振りの連続で、すっかり落ち込んだ彼女は今夜、この浜辺で自分の不甲斐なさに一人、泣いていた…
との事だった。
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