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このあたり一帯は、僕の庭のようなものだ。
家の周りに広がる住宅街は、路地が入り組んでいて、初めて訪れる人はみな口を合わせて迷宮のようだと言う。
地図アプリを見ながら歩いても、最短距離で目的地に到着するのはほとんど不可能なのだと。
「もう少し利便性の良いように町を整備すれば良いのに」
趣味のフットサルサークルで仲良くなった大木さんは、駅から徒歩十分の我が家までの道のりを一時間近くさまよった挙句、ようやく辿り着いた我が家の玄関で呆れたようにつぶやいた。
うちのリビングに鎮座する自慢の大画面の液晶テレビで、ビール片手にワールドカップを観戦した後、「駅まで送っていきますよ」という僕の申し出を大木さんはすんなりと受け入れた。
我が家に来ることが決まったときも「うちの周りは迷いやすいから駅まで迎えに行きますね」と言ったのだが、
「なぁに、杉野くんの家まで、初めて降りる駅の町並みを眺めながら向かうのも悪くないよ。日曜で日中も暇だから早めに家を出ればいいし」と大木さんは朗らかに返した。
同居している両親は留守にしていたので、宅配のピザも自分で受け取らなければいけなかったし素直に家で待つことにしたが、これが悪かった。
実際は、七時のキックオフにも間に合わず、ピザも冷め切った頃、ようやく玄関の呼び鈴が鳴ったのだった。
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