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第一章 お兄さん、悪い人でしょ?
薄明るい照明の下、相良 丈士(さがら じょうじ)はオンザロックのウイスキーを飲み干した。
軽やかなジャズのピアノが流れる中、丈士はグラスの中を見つめる。
考えるのは、今日大学の講義をずる休みした罪悪感などではなく、この残った氷を口に含むかどうか、だった。
そこへ、新しい酒が丈士の前に差し出された。
顔を上げると、見慣れたマスターが微笑んでいる。
「あちらのお客様からです」
マスターの見る方へ目を向けると、小柄な少年が手を振っていた。
「いいの? 未成年じゃない?」
「一応、成人しておいでです」
丈士がウイスキーのグラスを手に取ると、それを合図に少年はカウンターの端からこちらへ席を移って来た。
「飲んで飲んで。僕からの、奢り」
やたら人懐っこい笑顔だ。
栗色の髪は、ナチュラルツーブロックマッシュ。
色白の肌に、くるくるとした瞳。
なだらかな鼻梁の下には、形のいい唇が。
ふるいつきたくなるような、美少年だ。
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