おやつを食べたのは誰!?

1/2
3人が本棚に入れています
本棚に追加
/2ページ

おやつを食べたのは誰!?

「総員!そこに直れ――!!」  私の掛け声と共に、家族全員がびしー!とリビングに集合した。  我が家はなかなかの大家族である。  母親の私にその夫(父親)。長女、次女、三女。そしてマルチーズのリッキー(♂)と、柴犬のマリー(♀)だ。 「な、な、なんでありますか母殿!」  敬礼のポーズのまま、一番震えているのが夫である。我が家の序列は明白だ。私>リッキー>マリー>長女>次女>三女>>>(越えられない壁)>>>夫である。仕事をしてくれているのはありがたいが、とにかくぐーたらで酒癖が悪いので家族からはまーったく尊敬されていない父だ。とりあえず、お酒を飲んですぐ泣き出して、妻から犬までキスして回るのは全力でやめていただきたいと思う。 「私のおやつの桃がなくなった。食べたのは誰!ずっと楽しみに取っておいたのに!」  私が叫ぶと、素晴らしいかな揃いも揃って全員が反応。分かりやすく視線をそらし、隠し事してますポーズである。 「も、桃は食べてない、本当だ!」  夫はちらっ、ちらっ、とサイフが置いてあるテーブルを見ながら言う。なるほどそこに秘密があるらしい。私はずかずかと歩み寄っていって財布の中を覗いていてやった。  思った通りだ。中から出てきたのは、真新しいキャバクラの会員証である。 「死刑」 「ひいいいいご、ご慈悲をおかーさまあああ!」 「は、母殿!私は潔白です!ていうか、不器用すぎて桃を剥くとかできないんで無理っす!」  フライング土下座をした父親を無視し、はい!と手を上げたのはボケっ倒しの高校生の長女だ。その手に絆創膏が巻かれている様子もないので、桃に関しては潔白だろう。ただし。 「食べたのは桃じゃなくて、お母さんが隠してたプリンだから!」 「お前はそっちの犯人か!」  語るに落ちている。てーい!と長女の頭に特性のハリセンを振り下ろす私。ぽーん、とコメディよろしく隣室まで吹っ飛んでいく長女。
/2ページ

最初のコメントを投稿しよう!