カタツムリ

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カタツムリ

「おっ珍しいね。」 『…………。』 雨の日、妻と一緒に外へ出たら道路の真ん中に大きなカタツムリがいた。 近年、見かけることが少なくなったから珍しく感じる。 しかし、妻はカタツムリが苦手で視界に入れた途端固まってしまった。 いつか苦手な理由を聞いたことがあるな。 『うずまきを見てると吸い込まれる気がする。』 とか不思議な事を話していた。 ぬるぬるしてるからという理由なら分かるが、なぜ吸い込まれそうな気がするのか…。 そんな事を思い出してると向こうから車が走ってくるのが見えた。 このままでは車に轢かれてしまうと思い、カタツムリを移動させようとしたが、妻の方が早く動いた。 妻はカタツムリを掴み取り近くの茂みに置くと茂みの奥へ消えて行った。 「すごいじゃん。カタツムリの恩返しあるんじゃないか。」 『……………。』 返答もなく無言のまま止まっていたので、顔を覗き込むと、妻は涙目になっていた。 思わず吹き出してしまった。 「…えっ!そんなに苦手?」 『今、笑った?』 あっヤバイと思った時には遅く、僕のコートの裾でカタツムリの触った手を拭いていた。 これ買ったばかりだったんだけどな…。
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