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憂鬱な気分を抱えたまま家に帰る。ただいま、と玄関を開けるが、美桜の大きな泣き声しか聞こえて来ない。
まさか、
という気持ちに鼓動がうるさくなる。
「由紀さん?」
返事はない。家にいないのか?
とりあえず赤い顔で泣き続ける美桜を恐る恐る抱き上げ、部屋中を見て回る、と……
キッチンの床に倒れている由紀さんを見た。
ガラスのコップも一緒に倒れ、水も少し溢れていて、何より異様だったのは、白い錠剤がいくつも散らばっていた事だ。
「由紀さん!? おい、おい、由紀っ!?」
死んでいるのか、と最悪な想像をして心臓が嫌な音を大きく響かせる。だが、鼻から呼気を感じて、ああ、と安堵の声が漏れる。
しかし、安堵している場合ではないと僕は鞄の中からスマホを取り出し、震える指で119をタップする。
一体、由紀さんに何があったんだ!?
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