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救急車で総合病院に運ばれた由紀さん。
運ばれた先は何故か精神科だった。
そこへお義母さんが駆け付けて来てくれる。
「倒れたって?」
「はい、今は寝ているみたいですけど」
「美桜ちゃん大変でしょ、抱っこしてあげるから」
ふくよかな手を差し出してくれる由紀さんの母へ泣きぐずる美桜を渡すと、どうしてか美桜はピタリと泣き止んで義母の胸ですやすやと寝てしまった。
「美桜ちゃん私が抱くとすぐに寝ちゃうのよ」
「由紀さんでもそんな事出来ないのに……」
「そうね、あの子それで育児に自信なくなって産後うつになっちゃったのよ」
「産後うつ? 由紀さんが?」
「あら? 知らなかったの? あの子隠していたのね。自尊心だけは高い子だから、ごめんなさいね」
「あの、どうして?」
「どうして、……って聞いちゃうのね」
それはお義母さんの声ではなくベッドにいる由紀さんの声だった。
振り向くと、僕の知らない顔をした由紀さんがそこにいて、真っ直ぐ天井を見つめていた。
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