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仕事が終わって家に帰って来た由紀はイキイキとしていて、それがまた凛として美しく僕は何度も恋に落ちてしまうんだ。
「ただいま」
「おかえり。ご飯できてるよ」
「うん、いい匂いがしてる。お腹すいたな。でもその前に美桜〜」
育児、家事に追われいっぱいいっぱいだった由紀さんの顔には余裕があった。泣いていた美桜も母親の腕に抱かれ、落ち着いたのか泣き止む。
「あうっ、あう」
「なあに、美桜? 待っててくれたの? ただいま!」
「あっ、あっ!」
由紀さんの顔に向かって美桜が手を伸ばす。
「おかえり、って言ってくれてるの?」
「そうなんじゃない?」
「そっか。……ふふ、可愛いな〜」
由紀さんが笑うと、美桜も笑う。
そしてそれを見て僕も笑う。
完璧とはほど遠いこの家の中で、家族に笑顔が溢れていた。
〈了〉
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