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弁当を広げる僕の右に焼肉定食の白石が座り、左には同じく同期で別の課の田畑が弁当を広げる。
「藤井の弁当が羨ましいね」
彩り豊かな僕の弁当を覗き込む田畑がぽつりと呟いて蓋を開けた。
「なんだろうなこの違い。冷凍食品のオンパレード」
「田畑それは奥さんに失礼だろ、作ってもらえるだけありがたく思えよ。だが課長は凄いよな、弁当まで完璧」
「冷凍食品なし、残り物なし、全てが完璧」
「はは、ホントに凄いよね。僕とは違って……」
「おい、どうしたんだよ藤井。課長みたいな高嶺の花を奥さんに貰って、そんな情けない顔するなって!」
そうだね……、こんな顔由紀さんには見せれない。幻滅されるに決まっている――そう思いながら冷めてもふっくら美味しい玉子焼きに口をつけた。
奥さんはこんなにも完璧なのに、僕ときたらまるで駄目。こんな姿絶対に見せれない。
そう、僕は課長になって仕事の出来ない自分を由紀さんに隠しているんだ。
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