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それから代わり映えない日常を過ごしていたのだが、食堂でいつもの完璧な弁当を広げると田畑が首を傾げる。
「どうした田畑?」
「いや、なに……」
「何だ? はっきり言えよ?」
「珍しいな、と思ってさあ」
「珍しい?」
田畑はこれだ、と弁当の中の一つのおかずを指差す。
「どうしたこれが?」
「このひじきの煮物、俺の弁当にもよく入ってるんだ。藤井のそれも冷凍食品のおかずだよ」
「なんだよ、毎日作ってるんだ一品くらい冷凍食品だっておかしくないだろ?」
「いや、そうだよな。悪い。あの完璧な課長が珍しいなと思っただけだ。すまん」
その日はそう笑って過ごしたのだが、その些事がだんだん大きくなって行く前触れだと僕は全く気づきもしなかったのだ。
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