かくしごと

翌昼も、弁当を広げると田畑は、あれ？　と覗き込んで来た。

「どうした？」
「今日は２品冷凍食品だなと思ってだな、……いやいや、悪い。そんな日もある。俺の弁当なんて毎日さ」

由紀さんと一緒になってから冷凍食品なんて無縁だったのだが、これが１週間も続くと田畑も白石もこれは何かある、と面白がり始めていた。

「何かあるとは、何だ？」
「何だろうな、……お前の会社での情けなさが伝わって、こんな奴には手抜きで上等とか思われてたり？」
「とうとう愛想尽かされたのか？　ははは、あんな高嶺の花、持ってくからだ。そうだなあ、浮気や不倫かもな、ははは〜」
「おい田畑。言っていい冗談と悪い冗談があるぞ！」
「あ、つい。いや、悪い、すまんすまん！！」

この田畑という男。悪い奴ではないのだが、面白い話だと思うと周りを見ずに突っ走る癖がある。

いや、僕にとってはちっとも面白い話ではないのだが。しかし、まさか、と思って気分が悪くなりそうだ。

「大丈夫か、藤井？」
「ああ」

そんな訳ない、と思いたい。由紀さんに限ってそんな事……、だが僕は自分に自信がなかった。