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浮気、不倫、浮気、不倫……
あり得そうで、でもあっては欲しくないもの。
僕の情けなさがバレたのだろうか。
「はあ」
「おいおい、朝から溜め息なんてやめてくれよ」
「どっちかな?」
「何が?」
「浮気かな? それとも不倫かな?」
「いよいよ思考はそこに辿り着いたのか。で、どっちがいい?」
「どっちも嫌だよ。はあ〜」
「女は上手く嘘を付けるからな。お前には一生バレないから安心しろ。まあ離婚届を突き付けられるまでは今の生活を送れるぞ」
「なんだよそれ他人事だと思って……」
「他人事だ。まあそう気にするな。人間誰しも疲れていたら休みたいし手を抜きたくなるだろ?」
白石はそう言うが、僕は由紀さんに対して『疲れる』という言葉だけは無縁な気がしていた。
どんなに多忙でも休まず寝る時間を惜しみ徹夜してでも仕事に邁進していた由紀さんに一番似合わない言葉だった。
ふん、と鼻で笑う。あの完璧な由紀さんがまさか疲れたなんて違うだろうと。
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