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本編 左投げ遊撃手さん writing
「いあっさっせー」
自動ドアが開き、コンビニバイトの山本元也(やまもともとや・40歳・男性)がいつも通りに気の抜けた挨拶をした。
入店してきた男は懐手のまま、レジの山本の前までつかつかと近づいてくる。
「なんでしょうか?」
懐から取り出した黒い塊が山本に突き付けられる。
銃だった。
「強盗だ。金を出せ」
「えええ!?」
「聞こえなかったのか!? 強盗だ! 金を出せ!」
***
コピー機に全裸で挟まれていた露野五九男(きりのいくお・33歳・男性)は戦慄した。
店内に強盗がいる。めちゃくちゃでかい声で強盗だと名乗っている。
どうしよう。
コピー機は絶賛稼働中で今も露野五九男の局部をカラーコピーし続けている。
排出口にはすでに数十枚の局部が溜まり、新しく吐き出されたコピー用紙は床へと次々滑り落ちていた。
逃げることは容易い。
コピー機のすぐ横には自動ドアがある。するっと出ればそれで終わりだ。
だがこのまま売上金を盗られてはこのコンビニが潰れてしまう。
怠惰なバイトが多く、全裸で入店しても衣服を着た者と全く同じ対応をしてくれるこのコンビニが彼は好きだった。
逃げるわけにはいかない。
露野はコピーを途中で中止すると、150枚近い局部刷りA4用紙の1枚をc股間に張り付け、残りは全てクラッチバッグにしまった。
恐る恐るレジへと向かっていく。
「や、やめろ!!」
強盗が振り返る。
局部を局部で隠しただけの露野五九男が目の前に立っている。
強盗はすぐさま銃を露野に向けた。
「なんだ貴様! 動くな!!」
「いやだ! このコンビニを、お前の好きには……させない!!」
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