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「ごめん、そういうのやめてくれるかな」
総務の彼、川谷和弘が、面倒くさそうに言った。
ふらついたふりして、彼に抱きついた時だった。
「わざとだろ?分かってるんだよ。日下部さん、モテるから、誰でも落とせると思ってるだろうけど、自分には効かないよ」
これで、何度目だ。じっと見つめてみたり、さりげなく食事に誘ってみたり・・・ボディータッチでもダメか。
「川谷さん、とっても素敵な恋人がいるんでしょうね。見てみたいな」
「見せようか?」
スマホ画面に写っていたツーショット。和弘の隣の女は、全く平凡な女だった。こんな女に私は負けてるの?
「すっごい、優しいんだよ。毎週末、手料理作ってくれたりしてさ。クリスマスのスペシャルディナーとケーキ、おいしかったな」
なるほど、家庭的な女、ってわけね。
翌日、私は、川谷さんに言った。
「ねぇ、川谷さん、私、お弁当作ってきたの。食べてくれる?」
「いらない。香耶乃以外の女の作った料理なんて、食べる気もしないね。ほかの女の作った弁当食べるなんて、香耶乃へのうらぎりだ」
この、真面目一辺倒男!どうにかして、わたしのボーイフレンドリストに載せられないかしら。
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