部長の秘密

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 僕の体に部長が覆い被さるかっこうになった。  部長の体のぬくもりがワイシャツを通して伝わってくる。目と鼻の先で、たよりない髪がふわりと揺れた。  これが麗しい女性なら、甘い香りが艶やかな髪からただよってくるのだろうか……。  ……て、なんで僕は、女ではなく、ハゲたオッサンとこんなことになってるんだよ!  こんなハプニングは、美男美女にかぎるもんだろ? 「なにを」 「なにをしているんですか!」  なにをするんです、と文句を言おうとしたら、顔をあげた部長にものすごい剣幕で迫られた。  こんな風に部長が怒った顔は見たことがない。  僕の苛立ちはすっと消え失せ、いやな汗が流れてくる。  部長の様子を見れば、僕がまずいことをしでかしたことがわかる。 「す、すいません。部長がなにをこそこそしてるのか気になって……」  怖い部長の顔をまともに見れずに、目をそらす。正直に白状した声はかすれた。 「まったくもう、君は……」  はぁ、と部長は力なく笑いながら息を吐くと、顔を引きしめた。 「帰ってください」  部長は立ち上がると、再び社の中へと入っていく。 「待ってください。なにをしているのか教えてください」  部長の怒りは怖いけど、ただ帰れと言われても納得できない。  謎を解くために探偵になりきってここまで尾行して来たんだ。探偵は謎を解きたい。  と、部長がこちらをキッと睨んだ。  ひぃっ、と息をのんだ次の瞬間、部長はこちらへ飛び出してきた。  また押し倒されるのかと、身構える。
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