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ユリコ
次の日も、ユリコは店に来た。安いのは、初回限定。二度目以降は、指名料が必要になる。そんな事は同業者のユリコだって、知っているはず。
それなのに。
「続けて来て、大丈夫?」
思わず、そんな言葉をかけてしまう。昨日、売上目標を達成したからって。罪滅ぼしのつもりか、俺は。
売上目標達成のため。そんな理由をつけて、何人の女性客を誘惑し、昼の世界から夜の世界へと、引きずり落としてきた事だろう。風俗に売り飛ばした事だって、一度や二度ではない。
「いいのよ。私、お金はあるんだから」
ユリコの言葉には、妙な説得力がある。昨日の夜も、一時間の延長を申し出たかと思うと、五万円のボトルを開け、その全てを現金で支払った。
よほど良い客をキープしているのだろう。ユリコの金の支払い方には、躊躇いが無かった。
あまりしつこく止めては、先輩に睨まれる。俺は自分のツケにされない事を祈りながら、ユリコの接客を続ける事にした。
少し間を置いて、三度目の来店。
その時、思い切ってユリコに、同伴を頼んでみた。ユリコは目を丸くしたあと、恥ずかしそうに頷いた。時折見せる、ユリコのウブな態度に、年相応の若さを感じる。
仕事柄、自分から客に年齢を聞くことは少ない。ユリコは、二十歳前後といった所だろうか。
それで、こんなにも自由に金を使えるのだ。女という生き物にとって、夜の世界は、金の成る木のようなものだろう。
だから、その金を少し分けて欲しい。そう思うのは、人として当然の事じゃないか?
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