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「俺が誰と何してようが、あなたに関係ないです。手、離してください。」
声を張って精一杯睨むと、男は目を見開いて俺の肩を揺する。
「なんで君はそういうことを言うんだ!僕が君に好きだと言った時、笑ってくれたじゃないか!それって、君も僕のこと好きだってことだろ?」
全く身に覚えがない。話の腰を折りたくなくて、聞こえていなくても愛想笑いで誤魔化してしまう癖が出たんだろう。優一にいつかお前はその癖で痛い目を見そうだ、と常日頃心配されていたが、どうやらご明察だったらしい。
「ねえ、君は僕の気を引きたくてそういうことを言うんだよね?そうだよね?」
男は手を俺の頬に滑らせた。反論しようと開いた口はその手に塞がれた。
「ああいいよ、分かってるよ。君のことは全部。でもね、駄目だよ。すごく、不安になるんだ。そういうことされると。」
荒い男の呼吸が顔にかかる。気持ちが悪い。思わず顔を顰めた。男はひとつ溜息を漏らすと、トートバッグの肩紐を握り締めていた俺の両手首を片手で纏め、ぐいと引っ張って後ろを向けさせた。後ろから抱きしめられるような体制になる。
「や、めろって……!」
口の封が開いたのは良かったが、男の湿った肌が密着して嫌だった。もがいだが、抜け出すことは出来なかった。ざらつきのある濡れたものが耳を撫でた。思わず情けない声を漏らす。感触からして、大方男の舌で舐められたのだろう。想像してしまって、吐きそうになった。
「_僕がどれだけ君を愛しているかっていうのを教えてあげるよ。」
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