家族

息子の場合

佐藤良夫、16歳。
中学３年、サッカー部所属。
性格は温厚だが、幼少期より活発な一面もあり 最後の大会ではゴールキーパーとして活躍もした。

「さぁ、いよいよ受験のシーズンだ。来週の模試に備えて、今日は数学のテストをします」

えぇー、と どよめきが響く 午後６時の塾の教室。学校のひとクラスよりも少ない20人が、聞いてないよと口々に不満を漏らしながら答案用紙を受けとる。

「めんどくせー」

良夫もそう呟きながら、問題を解き始めた。
いつも俺の右横に座る三好さんは、数学が得意。三好さんは真面目なので、問題用紙にも答えを書き込む。そして、それが机からはみ出すタイミングで、俺は顔をあげ目だけで右を見る。

視力は良い。サッカーで培った運動神経、洞察力で素早く解答を見る……見る……

俺はいつでも、成績は中の上。
塾に限らず学校でも、席の運で多少上下するがこの位置をキープしている。

この調子で受験も乗りきれるだろう。