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母の場合
佐藤久美子、46歳。
人に誇れる様なことは何もなく、このおよそ20年間子育てや家事に追われてきた。
「週末、お友達とランチしてきてもいいかしら?」
リビングに集まった家族に、誰ともなく声をかける。
「いんじゃない??私も友達と遊びに行くしー」
娘が返事するのに呼応し、旦那も頷く。
「いいとも、いいとも。ゆっくりしておいで」
「ありがとう。うれしいわ。良夫は?塾に行くならお弁当作るけど」
小型ゲームに視線を落とす息子は、こちらを見もせず首を振った。
「良夫と僕は、適当に昼ごはん食べるから気にしないで」
「じゃあ、行ってくるわね」
翌朝、娘が出掛けるのを見送ってから 久美子は家を出た。
そして……
「お待たせ」
久美子は目的の人物を見つけ、小走りした。
見知らぬ中年男性が微笑みながら、手をヒラヒラさせ久美子を迎える。
「行こうか……」
中年男性が、久美子の腰に手を回し
2人は白昼のホテル街へ消えていった。
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