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🌙まごのつぶやき 1
レース編みが趣味だった琴理さん。
琴理さんは私の祖母だけれど、私は「琴理さん」と呼んでいる。彼女の部屋は、レース編みでいっぱい。私も色々作ってもらった。
琴理さんはよく、レース編みのストールを肩に掛けていた。薄いピンク色がとても上品なものだ。私はずっと、それも琴理さんが編んだものだと思っていたけれど、ある日、私がそのストールと同じものが欲しいと言ったら、「綺麗でしょう? これは高校の時の先輩が編んでくれたの」と教えてくれた。
「先輩が卒業するとき、私にくれたの。私はね、その先輩に憧れて、レース編みを始めたんだよ」
琴理さんはそう言って、昔を懐かしむような顔をした。
「琴理さんは、その人に何か編んであげた?」
私が訊くと、
「私も先輩にストールを編んであげたの。あれが初めての大作だった。先輩がずっと持っててくれたかどうかは分からないけど……」
琴理さんは、うつむいて少し黙ったが、すぐに顔をあげて、
「これとは色違いのストールを編んであげるから、私のお願いを聴いてくれる?」
なんて言うものだから、どんなことを言われるのかと思ったら、そのお願いとは、
「私が死んだら、このストールと、鏡台の中に入れてある封筒を、お棺の中に一緒に入れて欲しい」
というものだった。
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