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🌙ことりのつぶやき 3
茶色がかった瞳は、本当に鷹のよう。じっと覗き込むように見つめられ、私は一瞬、たじろいだが、負けるものかと思い、こちらもじっと見返した。鷹が口を開いた。
「琴理ちゃんは、僕と一緒だね」
「……え?」
思ってもみなかった言葉に、私は戸惑った。
「琴理ちゃん、沙月先輩のこと、『好き』でしょう」
鷹は、真面目な顔で、私の返事を待っている。どうやらこの鷹は、鈍感な沙月先輩と違って、勘が鋭いようだ。私は「ああ、気づかれてしまった」と思うと同時に、何故か、すっきりとした心持になった。
「ええ、私、沙月先輩のことが『大好き』です」
私は、鷹の顔をまっすぐに見つめて、答えた。
「僕達、同じ思いを持つもの同士、仲良くできないかな?」
「……それはまだ分かりません」
「なあに? 二人とも、何話してるの?」
沙月先輩が帰ってきた。
「二人とも、君のことが大好きだって話だよ」
鷹が答えた。
「私も、二人のことが大好きよ」
沙月先輩が答えた。その屈託のない笑顔。
私はこの笑顔を崩すつもりはない。鷹が、この月に相応しい鳥なら、私は月に懐いているスズメのままでいい。
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