第一章/#01-01.定時ゆりりんの裏の顔

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 すらっとしたスタイルを際立たせるよう、トレンドのロングスカートを履いている。トップスは七分丈で敢えてのワッフル素材のバックヘンリーが可愛らしいデザインだ。抜け感――いい女だというだけで、敵を作りやすいので、抜け感を作るよう彼女は意識している。顔立ちが華やかなので、アイシャドウは、いつも、無難なブラウン系を選ぶ。 (ああ……わたしって本当罪なひと……)  通り過ぎるだけで周囲の人間を虜にするのだから、生まれながらに罪作りな存在だと彼女は思う。――本当に。  周囲の羨望の眼差しをさらりと受け流し、美百合はエレベーターに乗り込んだ。17時ジャストにあがる人間は珍しいらしく、エレベーター内はいつも、無人だ。誰もいないのをいいことに、彼女は携帯を取り出し、待ち受け画像を見てにまにまと笑う。――待ってね。いま――会いに行くから。
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