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貴重品ならばなおのこと返さねばいけない。
朱里は派手な金髪頭を追いかけようとしたが、後ろから手首を掴まれ引っ張られたため追うことが出来なかった。
イラついて手を掴んだ相手を睨みつけると、そこには剣幕の表情の男が立っていた。
「ちょっとおまえっ!俺の財布を取っただろう!」
状況を理解するのに時間はかからなかった。
さきほど慌てていた男は財布を盗み逃げていたのだ。
似たような風貌で間違えられたか……仲間とでも思われたのか。
朱里を鋭い目つきで睨み、何かを叫んでいる。
異常な騒ぎに凜も戻って何かを話しているが、同じような派手な見た目のせいか信用してもらえていないようだ。
それどころか凜も仲間かと疑われている。
―――誤解だ!違う人だ!俺たちは関係がない!!
言葉は頭の中で現れては消えていく。
大人はどうせ言っても理解してくれない。
派手な見た目のせいでいつも誤解され、信用されない。
今までだってそうだ。
信用できる他人なんていたことはない。
警備員と凜の声が遠いところから聞こえてくるようだ。
祭りを楽しんでいたはずの周りの人たちもこちらをチラチラみながら写真を撮ったり、何かを囁いている。
『なに?事件?』
『あの派手な髪の子たちか。やりそうだよね』
『とくにあの金髪の赤い服の子、顔恐ーい。初めてじゃなさそう』
『若いうちから人生棒に振っちゃって……かわいそう』
何も知らないくせに
誰一人、俺のことなんか知らないくせに
見た目だけで人の性格や人生を決めつけるな!
声にはならない心の声。
朱里は目をつむって助けを求める。
「待ってください!!」
懐かしいような聞いたことのあるはずの声が響いた。
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