透明クラゲ

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 彼女たちには悪意も何もない。  ただ面白い事があったから、抹茶に報告しただけ。  噂を知ることにより、姫理桃や筒島梢がひどく傷付くかもしれないということを彼女たちは思いつかないだけだ。 「別に知ったからって、気にしなきゃいいだけだろ。顔も名前も晒せねえ奴の薄っぺらい言葉なんて何の力もねえよ。」  一番の異端である青玉があっけらかんとそう言った。  確かに彼は、仲間たちと違ってこの世界で溶け込むことをあきらめ、異端のまま馴染むことを選んだ。  周りにどう思われようが気にならない鋼の精神には屈服するが、皆が皆出来ることではない。 「全ての人があなたのように考えられるわけじゃありませんよ。」 「別にさっきの子なら裏掲示板(あんなもの)に負けない気がするけどなぁ」  心配性の兄の言葉に呆れ青玉は天井を見上げる。  部室の天井にはシミがいくつかあり、その中にクラゲのような模様を見つけてそっと丸い手でなぞってみた。  クラゲは泳ぐのが下手で水の流れがないと溺れて死んでしまうと本で読んだことがあった。  ぼんやりとしているようで、流れに乗れないと生きられない兄貴のような生き物だと青玉は思った。 「……あの子はクラゲじゃあねえよ。おまえと違って。」  言葉の意味を理解できなかった抹茶は首をかしげていたが、いつもの戯言だろうと寝転ぶ弟に「授業が終わる前には帰ってくださいね。」と忠告をして部屋を後にしたのだった。
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