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バカにされても言葉の意味も分からずヘラヘラ笑っている兄の顔を思い浮かべた朱里は胸の奥に苦い黒いものが広がっていくのを感じる。
―――アイツはいつもそうだ。怒ることはほとんどなく、いつもヘラヘラ笑っている。
朱里の顔に自然と浮かんでしまった表情は、兄の同級生たちの怒りを買ってしまった。
「なんだよその目は!何か言いたいことがあるのか!」
中心にいた恰幅のいい男子が朱里を突き飛ばした。
力の差もあったが、突然のことに朱里はぺたりとしりもちをついて突き飛ばした来たリーダーの方を見た。
「やっぱ道管の弟も名前どおり、女みたいに弱いな!」
「緑ちゃんに朱里ちゃんだしな!」
朱里を指さし、男子たちは笑った。
自分の名前と兄を馬鹿にされ、朱里は頭に血が上りさきほど突き飛ばしてきた体格のいい男子につかみかかった。
兄の緑のように何もしないだろうと思っていた朱里の急な反撃に怯んだものの、相手は体も小さい1年生。
リーダー格の男子は髪を掴み、引き離そうとした。
「ボクの弟に何するんだ!」
突如、黒いランドセルが朱里の髪を掴んだ男子に直撃した。
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