朱色林檎のラフメイカー

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 教科書やノートなどが何冊も入ったランドセルの重さはそれなりにあり、もろに食らったリーダー格の男子は朱里から手を放しひっくり返るほど。  投げつけた相手は誰かと視線を巡らせるとそこにいたのは、いつも笑って反撃などして来ない朱里の兄、緑だった。  彼の存在に気が付いた朱里を囲んでいた男子たちは一瞬驚きはしたが、とくにリーダー格の男子にとっては屈辱的だったに違いない。 「緑ちゃんのくせに何すんだよ!」  起き上がると一直線に緑につかみかかり、廊下は一時騒然となったが、職員室も近かったため、騒ぎを聞きつけた教師たちが間に入り朱里はもちろん、緑もそこまで大きな怪我はせずに済んだ。  「朱里が無事でよかった」と、座り込んでいた朱里にいつもの締まりのない笑顔を見せた兄の姿に朱里は安心すると同時に、何もできなかった自分があまりに惨めで、情けなく感じ、よくわからない怒りを覚え黙ったまま兄を睨みつけていた。
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