11人が本棚に入れています
本棚に追加
/24ページ
いよいよ疑問が疑心にかわり、凜を訝しげに睨みつけた。
「前から気になっていたけど、おまえはこの学校の生徒じゃないのか?」
一瞬きょとんとした表情をした凛だったが、自分が普段学校にいないことを指摘されると納得したように頷いた。
「言ってなかったけどオレ、全日じゃなくて定時で通ってんだよ」
「……定時?」
「夜に授業受けてんだよ。先生より年上の同級生とかいて楽しんだぜ」
凜も含め事情があって高校に通っていない人たちが勉強しにくるらしい。
金銭的事情で昼間に仕事をしながら通う人、精神的に病んだりして学校に行くことが出来なくなってしまったことがある人、歳をとってから勉強したいと思ってくる人もいるらしい。
「オレも学費稼ぐために普段は兄貴の手伝いとかしたりしてるんだ。昼休憩の時間と仕事終わった後の時間……昼休みと放課後の時間だけいるのはそのせい」
つい最近まですぐ泣きそうな表情ばかりしていた凜だったが、仕事をしながら勉強をしているなんて……。
思い出してみればいつも持ってくるのも自分で作ったというおにぎりだったり、お弁当だ。
朱里も料理が苦手な母に代わり家族の食事や弁当の準備はするとはいえ、学費や生活費は両親がまかなってくれている。
なんとなく学校に来ているだけの自分なんかより、 制服も兄たちにお金を借りて買ったのだと笑って言う凜の存在に圧倒されるばかりだ。
「大変……なんだな」
「別に?馴染めないクラスにいるより気は楽。朱里も定時クラスに通えばよかったのに」
定時制の学校という存在にも驚かせられたが、確かに凜のいうように今の学校は朱里にとっても窮屈なところでしかない。
教室にいても目立つ容姿のせいで腫れ物のように扱われ続けるのだから。
最初のコメントを投稿しよう!