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翌日からは学校で会うことがなくても、毎日のように連絡が来る。
家族の連絡すら返事を返さない朱里も凜からの連絡には短くとも返信を送るくらいには仲良くなっていた。
「最近の朱里兄さんは楽しそうだね」
弟の紫音の言葉に思わずトマトを切る手を止めた。
家族の中で一番朱里を理解しているのは紫音だと感じてはいたが、まさか自分でも気付かなかったところを指定されるとは思ってもみなかった。
「別に普通だろ」
ゆであがったそうめんをシンクのざるに移し、水で麺を軽く流しながら答えた。
そんな兄を見て、紫音は食器棚から家族分の器を出しながら猫のようなツリ目を細め笑みを浮かべた。
「楽しそうにスマホを眺めている時間が長くなったからさ」
リビングでいる時も凛から連絡が来れば返信するようにしていたことを思い出し、思わず舌打ちをした。
いつも以上に不機嫌そうな雰囲気に紫音はため息をついた。
「大丈夫だよ。僕以外に誰も気付いていないから」
朱里は感情があまり表情に出ないほうだと小さいころから親も含め大人たちに言われたことがあったが、紫音にはすぐ分かるらしい。
兄たちとも歳が離れていることもあるだろうが、大人をよく見て育た紫音は観察力が家族で一番あるのだろう。
「学校の友だち?それとも……彼女?」
「そんなわけないだろ。最近、付きまとってくる奴がいるんだ」
珍しく質問をはぐらかす朱里の様子に紫音は何か勘違いをしたらしく、そういうことにしておくと人数分の箸とフォークを用意しながら言っていた。
反論しようかとも思ったが、タイミング悪く風呂上がりの半裸の父が「今日の夕飯はサラダそうめんか」などと呟きながら現れたため、この会話は続くことはなかった。
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