朱色林檎のラフメイカー

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 祭りの会場はやはり人が多く、その様子に朱里はげんなりした。  メイン会場の広場では地元出身のバンドや歌手もくるらしく、凜が事前に貰ったと言っていたパンフレットを片手に横で必死に説明してくれている。  朱里は半分以上聞き流しながらも、メイン会場に凜が行くと言い出したら置いて帰ろうと心に決め適当に相槌をうった。 「まずは腹ごしらえしようぜ!朱里はお好み焼きと焼きそば、どっちがいい?」  朱里からしたらどちらも自分が作った方がおいしいだろうとは思う。  だが凜は食べ歩きも楽しみにしているようで、光のせいか普段より赤みが目立つ瞳を輝かせて窺っている。 「……おまえの食べたい方でいい」  気の利いた返事など思い浮かぶわけもなく、かといって選ぶこともできなかった朱里は適当に返事をした。  だが凜はそれを自分の都合のいいように解釈したらしく嬉しそうに笑い両方買うと言い露店に駆け出す。  凜の無邪気に喜ぶ姿が、誰かの後ろ姿と重なる。  弟の紫音かとも思ったが、一緒にこの祭りへいった記憶はない。  ―――今の記憶はいったい?  そう思って立ちすくんでいると何かがぶつかる。  金髪に赤い服の同じくらい……いや、もしかしたら少し年上の男性だろうか。  ぼーっと立ち止まっていた自分も悪かったと思い、男が落としたものを拾い上げ渡そうとしたが相手はそうとう慌てていたようで人込みの中に埋もれて消えていった。  手のひらには収まらない黒い何かをマジマジと見るとそれは、長財布のような形をしている。
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