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いつもは教室の隅で大人しく音楽を聴いているか、本を読んでいるだけの梢だったが、動き始めると自分でも驚くほどの行動力を発揮し、先生たちやクラスメイトは面白がって、様々な情報が飛び交った。
だが、自分自身が発信している情報が不確かなため、どう頑張っても正しい情報にたどり着くのは難しい。
梢は心が折れそうになり、思わず廊下でへたりと座り込んでしまった。
誰もいない廊下だなぁと、目の前の教室を見るとそこはあの音楽室の前だった。
そういえば、あれから一度も歌声を聞くことはなかったと思い出す。
名も知らない彼女は歌うことをやめてしまったのかと、頭によぎった。
やっぱり、最初に出会ったときにちゃんと顔を見ておけばよかった。
どんなに後悔しても時間は戻らない。
思わず、泣きそうになった彼女の目の前で扉があいた。
梢は一瞬、もしかしてと淡い期待をもって空いた扉の方を見た。
だが、そこにいたのは……
青色のボールのようなものだった。
鋭くとがった目に同じくまあるい足が付いた生き物。
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