透明クラゲ

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 まるで梢に気付いていないかのように体に生えた手のようなコブで扉を丁寧に閉じ、てくてくとその場を歩いていってしまう。  ……今のは一体??  声の主とは思えないが、確かにあの音楽室から出て行った謎の生き物。  彼女の頭の中で『不思議の国のアリス』や『耳をすませば』のワンシーンが浮かんだ。  そうだ。物語の始まりはいつも不思議な生き物が運んでくる。  ―――追いかけなくちゃ!  梢は立ち上がると青色の生き物を追いかけた。  梢の膝の高さくらいの大きさだというのに足は早く、気が付くと曲がる後ろ姿しか見えない。  階段を下りたり上ったりしつつ、少し速足で追いかけ続けると見慣れない校舎のところに来た。  帰宅部の梢には縁のなかった文化部の部室が並ぶ校舎だと気づいたときには、青い生き物はまるで魔法で消えたようにいなくなっていた。  どの部屋に入ったのだろうと、こっそり窓の隙間から順番に部屋をのぞいてみる。  放課後なら生徒たちもそろっているのだろうが、お昼のこの時間にはまだ先生すら見当たらない。
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