赤坂君の隠し事

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赤坂君の隠し事

 最初に隠し事を発表したのは、赤坂君だった。発表は出席番号順だから、必然的に一番になる。  赤坂君は椅子から立ち上がると、神妙な顔で「隠し事」を暴露した。 「僕は本当は赤坂って名字じゃないんだ。本当は雲呑(わんたん)って名字なんだ。ラーメンに乗っているあの雲呑さ。変わった名字だろ? でも僕が不満だったのはそこじゃないんだ。みんなは知らないと思うけど、僕はどんなことでも一番にならないと気が済まない人間なんだ。勉強でも、運動でも、部活でも……。当然、出席番号でも一番を取りたかった。だけど雲呑って名字じゃ、後ろから数えた方が早い。少なくとも、このクラスでは一番後ろになってしまう。それでも僕は、どうしても出席番号で一番になりたかった。そこで、親に頼んで、親戚の赤坂さんの養子にしてもらった。赤坂さんはリンゴ農家で、ずっと"後継者が欲しい"と言っていたから、簡単に養子にしてくれた。高校を卒業したら、家業を継ぐっていう条件付きでね。リンゴ農家は大変な仕事だけど、出席番号が一番になるなら大した問題じゃないよ」  赤坂君は大人しく、利口だ。  出席番号で一番になりたいからという理由だけで、親戚の養子になるような人ではない。  現に、話が終わると、顔を赤らめて席に着いた。柄にもない嘘をついて、恥ずかしくなったのだろう。 「赤坂君にしては、ずいぶんぶっ飛んだ嘘をついたものだな」  俺は彼の嘘に感心しつつ、次に発表される隠し事に期待を寄せた。
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