類沢(俺)の隠し事

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類沢(俺)の隠し事

 そして、ようやく俺の番が回ってきた。  これからする話は、今まで誰に話してもバカにされてきた話だ。だが、確かな真実である。 「これは俺の兄貴の友達から聞いた話なんだが……」  俺は席から立ち上がり、俺の「本当」の隠し事を話した。 「俺の兄貴の友達は冒険家で、世界中を旅しているんだ。たどり着くのに何週間もかかる場所や、まだ誰も行ったことがない場所にも行ったことがある。俺は兄貴の友達から旅の話を聞くのが大好きで、いつも楽しみにしていた。ついこの前も、"世界の果てを探しに行く"って行って、冒険に出た。俺は"地球は丸いんだから、世界に果てなんかない"って言ったけど、兄貴の友達は旅立ってしまった。それから一週間ほど経ったある日、兄貴の友達から電話がかかってきた。兄貴の友達は"お前の言う通り、世界に果てなんかなかったよ"と言った。だけど、こうも言った。"その代わり、この世界の秘密を知った。ここは架空の物語の中の世界で、俺達はその登場人物の一人なんだ。世界は作者の気まぐれで再構築され、人が増えては消えていく。かく言う、俺の出番もここで終わりだ。じゃあな"。それ以来、兄貴の友達からの連絡は途絶えた。行方も分からない。もしかしたら、この世界の秘密を知ったことで、消されたのかもしれないな……」  俺の話が終わると、教室は爆笑の渦に包まれた。 「おいおい、類沢! またその話かよー」 「お前の十八番じゃーん!」 「この世界が架空なんて、あり得ないって!」 「アニメの見過ぎだぞー!」  ……うん。予想してた反応だけど、心が痛い。  まぁ、笑たくば笑えばいいさ。いずれ真実だと知った時、お前達も俺のように恐怖するだろうからな。
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