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淀川先生の隠し事
全員が隠し事を暴露し終えると、淀川先生は「みんな面白いなぁ」と拍手した。
「じゃあ最後に、先生の隠し事を発表しようかな。本当か嘘かはみんなが判断してくれ」
そう言うと先生は、自分の隠し事を発表した。
ただ……これが一番、嘘か本当か分からない隠し事だった。
「率直に言うと、先生はエスパーだ。生まれつき他人の心を読める能力を持っていて、相手がどんなことを考えているのか、どんなことを面白いと思っているのか分かっちゃうんだ。実験体にされたくないから、分かっても黙ってたけどね。能力のおかげで得したこともあったけど、辛い思いをしたことの方が多かったかな。親友だと思っていた相手が本心では僕をバカにしていたり、好きだった女の子に告白する前にフラれたり……僕の奥さんが余命半年だと気づいてしまったり。彼女は僕に病気のことを隠そうとしていたけどね。僕も彼女の意思を汲んで、それとなく一緒に旅行へ出掛けたり、それとなく彼女が欲しがっていた物をプレゼントしたりした。いくら心が読めても、僕にはその程度のことしか出来なかったから。あまりにもドンピシャで当てるんで、奥さんも不思議がっていたよ。そして死ぬ間際、奥さんは僕に尋ねてきた。"貴方は私の心が読めるの?"と。僕は正直に話し、今まで勝手に心を読んでいたことを謝った。すると彼女は笑って"謝らないでよ。おかげで、とっても楽しい日々を送れたんだから"と言ってくれた。嘘偽りのない、本心からの言葉だった」
淀川先生が話し終わると、誰ともなく拍手をした。何人かは泣いていた。
俺は淀川先生の話に感動すると同時に、一つ確認しておきたいことが出来た。
「なぁ、先生。先生がエスパーなんだったらさ、俺が話した隠し事が本当に嘘なのかどうかも分かるのか?」
俺が質問すると、クラスメイトが全員ハッとした。薄々感じていたが、何人かは本当の隠し事を暴露したらしい。
教室中の視線が淀川先生に集まる中、先生はみんなを見回し、にっこりと微笑んだ。
「分かるさ。でも、先生から話すことじゃない。本当のことにしろ、嘘のことにしろ、みんなが楽しんでくれたなら、それでいいんだから」
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