知られちゃいけない聖女の勇者

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 少女はその問いに我が意を得たりと不遜な笑みを浮かべる。 「アタシは【聖女】だ」  この世界にただ【聖女】とだけ名乗るものはひとりしか居ない。 「マジで」  素直な気持ちが口をついてしまった。  一切の穢れを寄せ付けず燦然と輝く太陽のような存在感を放つ少女は仁王立ちのまま頷いた。  解体されかけた凄惨な魔獣の死骸とそれを為す獣頭の魔族を前に、恐れも気後れも不快も忌避も微塵ほどにも持ち合わせない立ち振る舞い。少なくとも彼女が非凡なのは間違いない。 「世界創世の四女神のひとり、でしたっけ。人間の神様の」  生まれ育った集落ではそう聞いていたのだが、彼女は不可解そうに眉をひそめた。 「人間の神様ってなんだよ変な言い方だな」 「違うんで?とりあえず神様ってとこは否定しないんスね」 「このなりだが別に人間の神様ってわけじゃねーよ」 「はあ。てっきり四女神ってのは人間の神様で、普段はどこか高次元で魔神と永遠に続く争いとかやってるもんだとばかり」 「魔神ってなんだよ」 「人間と敵対する種族の神様では」 「最近はそんなのが居んのか?」  この話、自分の中では完全に事実認定されていたのだがまったく心当たりがなさそうだ。 「え、ご存じない」 「知らねえって。魔神なんて名乗ってるヤツ見たことねえし光と闇のエンドレスバトルもねえよ。この世界のなにもかもがだいたいアタシらの被造物だ」 「だいたい?」  ふと言い回しに引っかかりを覚えたが、悲しいかな質問は舌打ちで返された。 「いちいち細けーな神経質かよ」 「え、あ、サーセン」
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