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時は流れて、私が32の頃
父上が銀行の貸し剥がしのため
覚悟の自決を実行した。
時はバブル崩壊のダメージで
皆、萎れていた。
父上も必死の努力報わず
社長保険を手にいれる代わりに
人生に終止符をうった。
棺に横たわる父上に
何度もビンタして目覚めさせようと
試みたが
目を覚ますことは二度となかった。
私は今里新地で、芸妓として
一世風靡していたが
父上の葬儀が終わるやいなや、
殿方たちの期待に応えるため
仕事復帰した。
しかしながら、頭の中は
父上の眠り続ける姿が占めていた。
仕事を終え、灯りの消えた家に
たどり着くと睡眠薬で強制シャットダウンする日々。
トイレに起きた時のこと。
死にたい死にたい言うてバカタレが
もう大好きなお父ちゃんに逢えないなら死んでもいいと思っていた私は
バカタレでもなんとでも言うがよい
と聞き流した。
死にたい死にたい言うてバカタレが
うるさいわ
うちが死のうとどうしようと
うちの勝手でしょ
死にたい死にたい言うてバカタレが
かまへんよ、何とでも言うたらええよ
お父ちゃんの待つ黄泉の国へ
うちも旅立つさかい
死にたい死にたい言うてバカタレが
とっとといんでんか?
金はあるさかい
死神に全部預けるわ
死にたい死にたい言うてバカタレが
あんたは一体何者
うちをコントロールしよう思てるんならお門違いや
眠気が勝って眠りに就いた。
目覚めてカーテンを全開にする。
夏真っ最中だったが
ふわっと風が吹き抜けた。
お父ちゃんなん?
うちもなお父ちゃんの待つ黄泉の国へ
行くさかい待っててな
蝉時雨を耳にしながら、
ダイスケを抱きしめた
お母ちゃんと一緒に逝くか?
答えない。
お母ちゃんだけ逝ってもかまへんか?
つぶらな瞳で私の声に耳を傾ける。
今夜、実行するわな
ダイスケと共に緑地公園へ行って
テントを張り一酸化炭素中毒で眠るように逝くつもりであった。
死にたい死にたい言うてバカタレが
なんとでも言うがよい
決意は、揺らがんさかい
遺書かて用意してあるさかい
覚悟の自決として取り扱われるだろう
死にたい死にたい言うてバカタレが
はいはい、私はバカタレやし
アカンタレでかまへんさかい
放っておいてんか
死にたい死にたい言うてバカタレが
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