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プレゼント
彼がさっきから、何やらベランダで戦っている。
ガサガサ、ドタドタ音がしている。
何してるのかな?
窓の隙間から、こっそり覗いて見た。
見てはいけない物を見てしまった。
いつもは、かわいい彼の別の顔だった。
彼に気付かれない様に、ソファーに座りテレビを見ている振りをした。
暫くして、彼が上機嫌で部屋に入って来た。
そして、私に得意気に渡してくれた。
彼が私の為にと用意してくれたプレゼント。
「わぁー、嬉しい、ありがとう(笑)」
そう答える私の顔は、青ざめていた。
頑張ってくれたのは大変ありがたいので、彼には言えない。
彼が満足げに、私を見つめてくる。
疲れたのか、彼が眠ってしまった。
その隙に、私は彼のプレゼントに向かって呟いた。
「ごめんなさい」
私は、彼のプレゼントが苦手だ。
それは、私にとって恐怖でしかない。
彼のプレゼント。
それは、死体だった。
正確には、死骸。
彼に言えない隠し事がある。
彼には内緒ね。
「ジジ、ごめんね。
お母さんは、虫が嫌いです。」
猫のジジは、ベランダにやって来る虫を楽しみにしているから、言えない。
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