その想いが ちからをくれる

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 だけど、それからの学校生活は、幾分かラクなものになった。  少なくとも低学年の頃のようなからかいは無くなった。  それは周りもみんな少しずつコドモではなくなったことも理由のひとつだろうけれど、何よりも直也くんが盾になってくれたのが大きかったと思っている。  あそこまで「メガネがイイ」と連呼されれば、さすがにみんなの意識も変わってくる。  わりと彼自身が、自ら公言したようなメガネフェチをネタにからかわれていたはずだけれど、彼はそれを真っ向から受け止めて思いっきり投げ返せる人だった。  ――体育の授業でメガネが歪んでしまったりして外さなくちゃいけないときの落胆ぶりだけ、どうかと思ったけれど。  それくらいのことが私にとって本当に些細なものになったのは、彼のおかげだった。  それまでは、眼鏡のレンズが私の盾代わりだったのに。  今は同じ高校に通えているけど、彼はものすごく勉強していた。  友達にも『大橋くん、智奈実と同じ学校に行きたくってがんばってるんだって』と言われて面映ゆさのよう嬉しさを感じていたけれど、受験が終わってから思い切って彼に訊いてみたら―― 『いやぁ、めっちゃ勉強して目悪くなったら、僕も新しい眼鏡にできるかもじゃん?』  ――なんて言われて。  惚れた弱みって言うけれど、さすがにこれは弱みを見せすぎたのでは?――とか、ちょっとだけ後悔してみたりもした。  そんなこんなで付き合い始めたのは、実は最近になってからだったりする。  ちなみに、中学の頃だけは直也くんもメガネだったが、今はコンタクトにしている。  彼曰く、『僕がかけるのは、やっぱり何か違う気がした』とのことだけれど、正直その感覚はやっぱりわからなかった。
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