その想いが ちからをくれる

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      ○ー○    上の階から吹奏楽部の練習の音が聞こえてくる教室。  他に人の姿はない。  そういうことを少しは期待していたけれど、いざこんな距離まで接近し合うと緊張してしまうのもきっとムリはないはずだ。 「意外と緊張してる?」 「意外と、じゃないよ」  私の答えに、直也くんは意外そうに息を小さく吐いた。 「ちょっとくらいかな、って思って」  彼はそう言いながら私の頬を撫でて、その流れでそっと眼鏡に触れる。 「昔からガード役みたいなところあるから、メガネって」  気持ちを隠すにも眼鏡は有用だって、歌った歌がある。  あの歌の主人公は時々私なんじゃないか、なんて生意気にも思ったりするくらいだった。 「じゃあ、僕には効果ないな」  直也くんはそう言って笑う。  だけど、彼のすっきりと短い髪は、ほんの少し紅くなっている耳をガードしてはくれない。  ――少しだけ、安心する。  これからは、もっと『ちゃんと見る』ためにも、この眼鏡を使っていこう。
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