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「ごめんなさい。それ、私のです」
右手に持ったペンを見て女の人が言った。
「どうぞ」女の人に差し出した。
「ありがとう」
女の人はじっとこっちを見た。
「何か?」
「どこかでお会いしてません?」
ハッとした。同じような事を思ってたんだ。
「僕もそんな気がしてたんです」
「でも、どこで会ったかわからない?」
女の人が言った。
「はい」
「同じ事思ってたのね」
女の人が笑った。
笑うと可愛い印象になる人だった。年上だけど。
「もしかして、この近くに住んでます?」
近所の人かと思って質問した。
「いえ、二駅先です」
「じゃあ、職場がこの辺とか?」
女の人が「そういう事ね」と頷いた。
先に答えがわかったようだ。
「何です?」
「いえ、なんか親しみのある人だなって思ったんですけど、似てますね」
「誰にですか?」
「のび太くん」
女の人が口の端を上げた。
ネコ型ロボットが出てくる藤子不二雄先生の有名な漫画が浮かんだ。
のび太君って、どんくさくて頼りないキャラだ。あんまり嬉しくない。
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