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映画が終わると、もう空が暗くなっていた。
「日が短くなったね」と直美さんが言った。
駅まで直美さんの映画の感想を聞きながら歩いた。
あの場面でどう思ったとかって聞かれるけど、直美さんしか見てないので答えられない。
だから、無難な感じだったとしか言わなかった。
「映画、つまんなかったよね。急にごめんね」
駅に着くと直美さんがすまなそうに言った。
「いえ、そんな事は」
「よく考えたらおばさんと遊んでもつまんないよね」
弱々しい笑顔を直美さんが浮かべた。
「そんな事ありません。楽しかったです」
「本当に?」
「はい」
「だから、また二人で出かけたいです」
直美さんが嬉しそうに笑った。
「のびちゃん、ありがとう」
次の週は水曜日と日曜日に直美さんと会った。
レンタルDVD店の近くのカフェで待ち合わせて、そのままカフェで二時間ぐらい話して、公園を散歩したりもした。図書館にも行った。
締め切りが近いレポートがあるという話をしてしまい、直美さんに図書館に連れて行かれた。そして僕はレポートを書き、直美さんは隣で読書をした。
直美さんの方を見ると、時々目が合った。直美さんはとても優しい目をしていた。会う度に直美さんの表情が優しくなっていく気がする。
直美さんは物凄く大切な人を見るような目をいつも向けてくれていた。
時折、寂しそうな顔をしている事にも気づいた。
もしかして、僕と一緒になれない事に寂しさを感じてくれてるんだろうか。直美さんは結婚してるから。
直美さんは僕の事が好きなんだろうか。
そんな図々しい事を思ってしまう程、直美さんは親しみのある表情や態度で接してくれる。
帰り道、思い切ってこっちから手を握った。
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