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直美さんは微笑んで握り返してくれた。
それで確信した。直美さんも同じ気持ちでいるって。
だから誘った。
「今度の日曜日、家に遊びに来ませんか?」
改札の前で言った。
「のびちゃん家に?」
「僕の部屋を見てみたいって言ってたから」
「そうね。確かに言ったわね」
「何もありませんけど」
「おかしな誘い方ね」
直美さんが笑った。
「普通、珍しい物があるとかって言って誘うんじゃないの?」
直美さんがクスクス笑った。
「じゃあ、のびちゃん家でDVDでも観ようか。『痴人の恋』持っていくよ」
「エロいやつですか?」
「そう。むらむらして襲わないでね」
「襲いたくなるような物、持って来ないで下さい」
直美さんがアハハと笑った。
明るい笑い声だった。
直美さんの笑顔が好きだった。
直美さんに会う度に山本に言われた事を考えていた。
――世の中にはエッチしたい女と、したくない女の二種類しかない。
その通りかもしれない。
僕にとって直美さんは前者の女性だ。直美さんの白い首筋を見たり、甘い香りを近くで感じてそろそろ限界だった。――直美さんとセックスしたい。
二十も年上の女性にそんな事を思うのはおかしな事だろうか。僕にとって直美さんは生々しい程、女だ。毎晩、直美さんの裸や、喘ぎ声を想像してしまう程、女だ。これはただ単に男性としての本能か。それとも僕がおかしいのか。そんな事を考えながら日曜日までを過ごした。
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